『ヘクソ夫人の迷宮』 立仙美幸著、『マラルメ−書物と山高帽』立仙順朗著
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『ヘクソ夫人の迷宮』 立仙美幸 著(暮しの手帖社)
『マラルメ−書物と山高帽』 立仙順朗 著(水声社)
言葉の詩、植物の詩
ふつう植物は、標本や図鑑で与えられた形状や定義におさまって、動こうとはしない。しかし、『ヘクソ夫人の迷宮』では、どこの道端にも生えているヘクソカズラと呼ばれるツル植物が、葉の形や茎の色を自在に変え、他の植物たちと戯れ、遊び、それらを真似る。その生命力は、アール・ヌーボーの植物図柄や唐草模様を思わせるほどである。マラルメという詩人も、言語の実用的な使用とは関係のないこのような遊びを、語と語のあいだに見出して愉しんでいた。
このように植物を観察することは、植物学では禁止されている。マラルメの詩も、言語のお目付役を任ずる人々から「ありえないこと」だ、「理解できない」と断罪されていた。しかし、糾弾されながらも、「文芸の神秘」である詩は、言葉のどんな言い回しのなかにも潜み、植物の神秘であるツル植物は、いたるところで、他の植物と紛れる。言葉は字引から、植物は図鑑から抜き取られて、命の源泉に浸されている。
立仙順朗



