現代工芸VS.美術、十二人の競演──ゲーテの目、あるいは舞踊する庭

【会期延長】2021年7月1日(木)~10月16日(土)
※本展覧会へのご入場の際は喫茶(1,000円・税込)をご利用ください。

 

アートビオトープ那須のアンテナ・ギャラリーである、千鳥ヶ淵のギャラリー册では、 「現代工芸VS.美術、十二人の競演──ゲーテの目、あるいは舞踊する庭」展を開催します。
昨年夏のスイートヴィラ(坂茂設計)15室オープンに合わせて、一年間、スイートヴィラの客室における、15の棚の展覧会をギャラリー册の棚に合わせてお届けする巡回展です。

「庭をめぐる私どもの肉体は、自然を呼吸し自らの血肉に滋養 するために、草木や土、風をさまざま「目」で愛撫する。目は、庭をめぐる神だ。それはまさしく、疾駆する舞踊の神、ギリシャのディオニソス神の如く、庭という自然の 類型、モデルを巡るダンスでもある。 ニュートン光学的な色彩学、色は物質に反射する光のスペクトルである、という常識に真っ向から敵対したロマン派の詩人 ゲーテは、色が物質に内在すると考えた。かの『ファウスト』のメフィストテレスのように、私どもの 「目」は単なる鑑賞を超えて飛翔し、現代に傑出した才能であるこの十二の作家によって、 私どももまた、鑑賞/享受を超えた、新たな創造の舞台の踊り手となる。」

(註)ゲーテ色彩学については、シュタイナー派の写真・映像作家である能勢伊勢雄さんによる、瞠目すべき、アートビオトープ那須「山のシューレ」の講演と、畏敬する高橋巌先生の『ディオニュソスの美学』 (春秋社、2005)『シュタイナー哲学入門—もう一つの近代思想史』(岩波文庫、1991)『神秘学 入門』(筑摩書房、2000)などから、すべて学んで借りた。

写真上から、小池頌子「青の形」/徳丸鏡子「Cosmic PlantsS」/留守玲「カノぺ」/さかぎしよしおう「1005」

 


一部の作品は、アートビオトープのオンラインショップでも取り扱っております。
アートビオトープオンラインショップ  artbiotop.shop

 


「黙示録、その自然観」
小池頌子(陶芸)

自然に触発された、柔らかく叙情的な造形を追求して定評ある小池頌子。自然の「身体」から成長し湧きあがって来る小池の静謐 。静やかな瞑想のひとときを楽しんでいただきたい。

 

「音と香り──共感覚の向こう側」
関根直子(平面、鉛筆)

ラスコー洞窟画や、抽象表現の巨匠マーク・ロスコに触発され、ますます空間の重層や深化をみせる関根直子の鉛筆画の平面。 関根の、自然そのものが縦横に飛翔し呼吸するような軽快な コラージュの、走り去る時の音を聴いてもらいたい。

 

「表現主義と舞踊」
横尾龍彦(平面、ミクスメディア)VS 高橋禎彦(ガラス)

ドイツで活躍し2015年に没した、神秘主義者にしてシュタイナー派の美術家横尾龍彦の「気」の霊画(と横尾はいう)と、現代吹きガラスの第一人者、ジャズの風をもたらすマエストロ高橋禎彦との競演。 見えない霊的分子、シュタイナーが「エーテル体」と呼んだ 「気」を禅で表現した横尾の舞踊画面と、自在で軽やかな音楽を身体で感じて「踊り出すような」高橋のガラス表現を楽しんでいただきたい。

 

「宇宙霊、成長する庭」
さかぎしよしおう(立体)VS 留守玲(鉄溶接)

留守は工芸、さかぎしは現代美術、という領域の違いがあり ながら、ともに複雑で独特な、鉄の粒を溶かした溶接、磁土の 垂らし混みと積層、乾燥、焼成、と、素材の限界に向き合う、 実力作家の出会い。自らいう「成る」こと「生まれる」こと(さかぎし)へ、直向きに対峙して評価の高い二人の、「造形」を超えた、見えない「宇宙芸術霊」への信頼を嗅ぎとっていただきたい。

 

「装飾と肉体」
内田あぐり(日本画)VS 川端健太郎(陶芸)

「エロチシズム」とは単に言い切れないような、「身体」の陰 に宿る、内面的な造形を追ってきた二人。現代日本画の最前線 を、装飾=肉体のぎりぎりの鬩ぎ合いで追う内田の、舞うよう に多層な空間。自在な生命器官的形と、多彩な色彩の煌めきに、 陶芸の悦楽、見る=触る、楽しみの境地を感じさせる川端。二人ながらの、生命感の乱舞を満喫してもらいたい、と思う。

 

「楽園への帰還」
イイノ・ナホ(ガラス)

詩的で涼やかな物語を感じさせる、彫刻的ガラスで大人気のイイノ・ナホ。モダンで都会的なイイノの、現代の巫女が産みだした、豊穣な楽園をどうか。 

 

ディアスポラ「故郷喪失、異界の旅」
内田有里(写真)VS 徳丸鏡子(陶芸)

チェジュ島、対馬など、複雑で困難な歴史を持った風景を、 内省的なモノクローム写真で追ってきた内田。日本工芸の伝統 「生を言祝ぐ」、花々や生き物の乱舞する祝祭的造形を追求し てきた焼きもの作家、徳丸。内田の静謐な黒い画面、その深みには人間の魂と風土と歴史 の魂が交わりがあり、徳丸の華やぐ白にもまた、私どもの日日の心模様の多彩が映っている。

 

「黒と黒、クールな庭」
樋口健彦(陶芸)

樋口は「器」にこだわらず「焼きもの」にこだわるという意味で現代工芸の異端児。建築や環境へと開かれた、彫刻的な仕事で評価が高い、中堅実力作家。見る者の観想をそくす黒い小宇宙は、多彩で交響的なポリフォニーを感じさせ、「黒」の無限な光彩を信じる樋口の、ユーモアと諧謔に満ちた、生讃歌を感じとっていただきい。

 

参加、全十二作家による競演。

キュレーション: 新見隆 (武蔵野美術大学教授)

 

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