© WienTourismus/Paul Bauer
世紀末ウィーンのカフェとサロン。あらゆる分野の芸術や学問が一度に花開いた時代に、知識人たちが分野を跨いで交流した二つの場所。文人カフェとしても知られる世紀末ウィーンのカフェには、男性たちが集い、新聞を読み、議論を交わし、執筆した。
一方、サロンの主催者は、進歩的な上流社会の女主人たちだった。世紀末のカフェとサロンを、それぞれの常連客やお菓子の話も交えつつご紹介し、写真をご覧いただきながら、ウィーンの街をバーチャル散策していきます。
レクチャー後は美味しいウイーン菓子と共にささやかな交歓のひと時を過ごしたいと思います。
パナソニック汐留美術館「ウィーン・スタイルビーダーマイヤーと世紀末
生活のデザイン、ウィーン・劇場都市便り」展(2025.10月4日(土)〜12月17日(水))関連企画
オーストリア在住27年。ウィーン大学ドイツ文学部留学を経て、東京大学大学院にて故・池内紀氏に師事、ウィーン文学をテーマに博士号取得。オーストリアに移住し、20年以上に亘って展覧会コーディネーターとして活動。ウィーン美術史美術館、ベルヴェデーレ宮殿、ウィーン・ミュージアムをはじめとする主要美術館を国外に紹介する数々の展覧会に携わる。展覧会業務と並行し、オーストリア国家公認ガイドとして、歴史、美術、建築、文学を中心に案内業務も行っている。オーストリア人の夫、十代の息子二人、猫一匹とウィーンの森に暮らしている。
10月4日からパナソニック汐留美術館で開催される展覧会「ウィーン・スタイル ビーダーマイヤーと世紀末 生活のデザイン、ウィーン・劇場都市便り」に先がけ、ウィーン世紀末文化にまつわる小さな集いを開催しました。
今回展覧会でもご尽力いただいている、オーストリアに移住し20年以上に亘って展覧会コーディネーターとして活動されていらっしゃる久保幸子さんにお話いただきました。
人気のカフェ・シュペールをはじめカフェ・ツェントラール、カフェ・ラントマン、カフェ・シュヴァルツェンベルク、デメルなど、名店を写真で巡りながら、ウィーンのコーヒー文化やウィーン菓子について語られました。
黄色と白のバチカンのシンボルカラーを思わせる「カルディナールシュニッテ」、この季節ならではの杏の菓子など、魅力的なスイーツの数々にうっとりしつつ、話題は、単にコーヒーとケーキを楽しむだけではない「カフェ」というものの、芸術や学問の創造的文脈における役割へと広がっていきました。
当時のウィーンのカフェには、新聞を読んだり、物語を書いたり、さまざまなテーマについて語り合ったりと、知的な香りが漂い、文化・芸術を愛する人々の集う場所でもありました。 分離派より少し遅れて結成された画家と彫刻家のグループ「ハーベンブント」や、ヨーゼフ・ホフマン、コルマン・モーザー、ヨーゼフ・マリア・オルブリッヒが結成した「七人クラブ」にも触れながら、当時の芸術家たちの熱気や理想に思いを馳せました。
また、文学の分野では、ヘルマン・バール、フーゴー・フォン・ホフマンスタールやアルトゥール・シュニッツラーらのよる『若きウィーン派』や、『群衆と権力』で知られるエリアス・カネッティについてのお話も。
さらに、リヒャルト・シュトラウスとホフマンスタールによるオペラ『薔薇の騎士』、そしてシュニッツラー原作の映画『アイズ ワイド シャット』なども取り上げられ、ウィーンにまつわる多彩な文化の話題が交わされました。
本当に充実のお話に、 ウィーンという都市に息づく、芸術・文学・音楽・映画の交差点、その文化の余韻を感じつつ、その後は、美味しいお菓子とともに楽しむ豊かなひとときとなりました。 文化芸術の発展に大きく貢献したサロン文化の担い手が女性たちだったことも印象深く、交流の時間にまたお話は深まりました。
今秋、パナソニック汐留美術館では「ウイーンスタイル ビーダーマイヤーと世紀末 生活のデザイン ウィーン・劇場都市便り」を開催いたします。本展は、19世紀前半のビーダーマイヤー期と、世紀末(19世紀末〜20世紀初頭)という二つの時代に焦点を当て、市民の関心が公的な権威を離れ、家庭や私的空間へと移行したオーストリア市民の暮らしを紹介します。そこに宿る簡潔で機能的な造形と、上質な素材を生かす職人技は、日本の美意識にも深く響き合います。二つの時代に培われた生活デザインと美学をとおして、ウィーンならではのエスプリをぜひご堪能ください。
パナソニック汐留美術館「ウィーン・スタイルビーダーマイヤーと世紀末 生活のデザイン、ウィーン・劇場都市便り」展
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