生誕100年記念 林忠彦写真展「カストリ時代 1946〜1953 ── 喪失をだきしめて」

2018年8月10日(金)~9月29日(土)

 

今年、生誕100年を迎える昭和を代表する写真家の一人、林忠彦。太宰治や織田作之助、坂口安吾など無頼派と呼ばれる文士たちの肖像で知られる彼は、戦後、北京から引き上げるとすぐにカメラを持って東京を撮り歩き、敗戦からの復興を目指してたくましく生きる人々を活写しました。そして、それらの作品をカストリ雑誌で次々と発表し、高い人気を得ます。「カストリ雑誌」とは、この時代に発行された安価な大衆娯楽誌のことで、その名前は当時出回っていた粗悪な密造酒「カストリ焼酎」に由来します。3合呑むと潰れる「カストリ焼酎」のように、たった3号で廃刊する「カストリ雑誌」。ただ、廃刊してもすぐに新しい雑誌が生まれ、それだけ当時の人たちは活字や写真を渇望していたのです。

1956年、経済白書に「もはや戦後ではない」と記されました。今、林の作品を見ても、遠い過去のように思え、実感など持てないかもしれません。ましてや、作品を見るだけで当時の人たちと同じ体験などできないでしょう。

しかし、林の作品から、さまざまな想像を働かせることはできます。例えば、品川駅でとらえた笑顔を見せる復員兵たち。戦地から帰ったことに喜びを感じているのか。それとも、友を失い、家族を失い、愛する人を失った大きな喪失感を笑うことでひた隠しにしているのか。

想像とは、過去と現在を結ぶ唯一の方法です。そして、写真はその想像を生み出す装置と言えるのではないでしょうか。弊ギャラリーは、千鳥ケ淵戦没者墓苑、靖国神社に隣接しています。この夏、林の作品に写し出された戦後の混乱期を必死に生きる人々。彼らと同じように日々を必死に生き、シャッターを切り続けた林の眼を通し、少しでも感じていただけたらと思います。

 


関連イベント
トークショー

8月11日(土)14:00〜16:00 齋藤康一(写真家)
8月18日(土)14:00〜16:00 立木義浩(写真家)

長年、林忠彦の助手を勤めた齋藤康一氏と、青年の頃に林と出会った立木義浩氏に、林との思い出、それぞれの戦前、終戦、昭和について語って頂きます。

参加費:3,000 円(お茶・お菓子付き)※20名限定、要事前申し込み。定員になり次第締め切りさせて頂きます。

 

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